税務トピックス
2013年5月31日 金曜日
競馬脱税事件の判決(四日市:光本会計)
結果はみなさんご存知のとおり、大阪地裁は雑所得認定で、一時所得とした検察側(国税当局の課税処理)の主張は退けられました。
しかし、所得区分については、5月30日に大阪地検が大阪高裁に控訴する方針を固めたとの報道もあり、まだまだ司法の場で争いが続きそうです。
ここで私が注目したいのは、検察がこの事件を「単純無申告」による所得税法違反として告発した点です。
現状での無申告による租税罰則を整理しておくと次のとおりとなります。
(1)ほ脱犯(不正無申告ほ脱犯)⇒10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金
(2)故意の申告書不提出ほ脱犯⇒5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金
(3)申告書不提出犯(単純無申告)⇒1年以下の懲役又は50万円以下の罰金
判決内容を見ると、検察の求刑が懲役1年であるところ、大阪地裁の判決は懲役2カ月(執行猶予2年)です。
これを分析すると、大阪地検の求刑が懲役1年であったこと及び罰金刑がないことから、当初から大阪地検は(3)「単純無申告」による所得税法違反として起訴したことがうかがわれます。
「単純無申告」というのは、(1)仮装・隠ぺいなどの不正行為がなく、(2)「故意」に申告書を提出しなかったという認定もできなかったということになります。平たく言えば、ただ申告しなかった金額が大きかっただけという認定です。
おそらく大阪国税局の課税ベースでの加算税も悪質との判断である重加算税ではなく無申告加算税が課されていると思われます。
また、検察や国税当局は、当然このケースでは(2)故意の申告書不提出ほ脱犯による起訴を目指したと思われますが、裁判に耐えられるだけの証拠収集ができなかったというところでしょうか。
いずれにしても、課税ベースで重加算税がかからない事案でも、申告していない金額が大きければ刑事事件となる流れははっきりしたようです。
今後は為替が大きく変動している関係で外為証拠金取引(FX取引)、国税当局が課税を強化しようとしている海外株式・海外不動産の売却などで、相当の「不申告犯」が出てきそうな気がします。
投稿者 光本会計事務所 | 記事URL